臨床心理学に基づいた知識と技術で援助する専門職は、日本では、心理カウンセラー、サイコセラピスト、心理士、心理相談員など、さまざまな名称で呼ばれています。 「臨床心理士」は、これらのうち、財団法人日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格し 資格免許を取得した心理専門職です。「臨床心理士」の資格試験は、だれでも受験できるわけ ではなく、受験資格を備えてなければいけません。受験資格は、大学院修士レベルの一定の教育課程を 修了した者、具体的には以下の基準のいずれかに該当する必要があります。
臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人に影響を与える専門家です。個々の人の 価値観を尊重しながら自己実現の援助をする専門家です。
次の専門業務が臨床心理士に求められています。
これらの四つの領域に関連する専門性についてすべてにバランスよく総合された専門資質を 身に付けることが必要です。
臨床心理士の「資格」は、財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が行う「資格審査」を 受けて、「資格試験」に合格して初めて取得できます。
「資格試験」は、一次試験と二次試験で行われます。合格の判定は、この一次と二次の試験 の成績を総合して行います。「多肢選択方式による試験、論述記述試験と口述面接試験」のそ れぞれの成績を総合して審査されます。
臨床心理士の活動領域は、極めて広範囲に及んでいます。 さまざまな場面で心の健康を支えています。
臨床心理士資格審査心理士資格認定協会が指定する「心理系大学院」の臨床心理学系 専攻修士課程を修了することが基本要件となります。現在は「第1種指定大学院」「第2種指定 大学院」「専門職大学院」の3種類があり、それぞれに特徴は以下の通りです。
実務実務経験なしで、 修了後すぐに臨床心理士資格審査を受験できる。
修了後1年間の実務経験を経た後に、臨床心理士資格審査を受験できる。
実務経験なしで、修了後すぐ臨床心理士資格審査 を受験でき、さらに筆記試験が一部免除される。
心理系大学院へ入学するためには、いつ頃から、どのような準備をすることが大事なのでしょうか。各大学院によって受験科目や内容は異なりますが、臨床心理学だけではなく基礎心理学や応用心理学などの専門科目、心理用語を含む英語論文の全訳や要約などを課す外国語科目、またこれまでの研究業績や今後の研究計画書を提出した上での口頭試問など、心理学の理解が一定の水準に達していることが要求されます。志望校の要項で確認し、提出書類や各試験科目にあわせて、しっかりと対策をしていきましょう。
他分野の大学院入試英語の傾向と同様に、心理系英語科目の出題パターンは以下の4つに大きく分類できます。
①全訳問題 ②下線部訳・下線部指示内容問題 ③要約問題 ④その他
①については、全文をスピーディーに読解して訳すこと、また和訳全体に一貫性をもたせることが重要です。
②では構文や語句の難易度が高めの文章が選ばれることが多いので、代名詞(it,
heなど)の指示内容も明確にしながら、丁寧な和訳を作成しましょう。
③では本文の主題の把握が必須ですが、どこか一部分を抜きだして和訳し、解答とするのではなく、各段落をまず要約してからそれらを統合し、文章全体のポイントを抽出するようにしましょう。
④では穴埋めや並び替え問題、英作文などが考えられますが、これは受験校によって異なりますので、志望校過去問の出題傾向を調べておきましょう。
いずれの問題形式であっても、心理系では比較的明晰な文章が出題されるので、その内容を
把握できるよう基本的な英語力を養うことが大切です。また教育・生物・臨床・実験などに関連した心理系専門用語を暗記しておくことも、適切な和訳を作成する上で必須です。
心理学系大学院の専門科目と一言で言っても、大学によって出題範囲が異なります。心理学領域全般から出題される大学もあれば、臨床心理学領域からのみの出題、または心理統計も大きな得点源となるような大学まで様々です。その出題範囲によって受験対策のあり方も変わってくるため、まず志望校の過去問をしっかり把握した上で、受験対策を練ることが必要になってきます。専門の出題パターンは以下のように分類することができます。
多くの大学で語句説明・論述問題が出題されます。用語がもつ意味・定義を的確に押さえるとともに、日頃から「書く」練習をしておくことが重要です。一方穴埋め問題では、詳細が問われる場合もあるので、基本に加えより細かな内容も確認しておくことが大切でしょう。事例問題は文献などで多くの事例に当たり、対応していくことが望まれます。専門科目においては、記述問題が多く出題されるため、日頃から「書く」ことに慣れ、第三者に添削などしてもらうのも有効な対策となるでしょう。