専門科目
語句説明と記述の2つの大問が出題される。それぞれの傾向と対策を見ていこう。
1、語句説明
毎年5~6個の語句が与えられ、その中から3つを選択して解答する形式となっている。近年は字数が指定されていないが、目安は1つに対して300~400字程度である。「アノミー」「機能主義」など、教科書を読んでいれば書ける非常に基本的な語句が1~2個程度出されている。まずはそれらを落とさないことに気をつけよう。「シカゴ学派」「同心円地帯論」など都市社会学の語句が出題される年があるので、それらにも目を配っている教科書を選ぶといいだろう。また、基本的な調査方法に関連する語句も頻出である。基礎的な理論と社会調査法の勉強を第一に優先しよう。他の特徴としては、「ハビトゥス」「レイベリング」など教育文化に関する語句の頻度が高いことが挙げられる。余力があれば、教育社会学の教科書にも目を通しておくといいだろう。
学習方法としては、教科書を読み、自分で実際に300~400字で重要語句を説明する練習が非常に効率的である。教科書の最後の重要語句説明は非常に役に立つので、それが載っているものを選ぶといいだろう。
2、記述問題
毎年1問出題され、およそ以下の3つの問いのタイプに分けられる。
①調査計画を書くもの
②理論について論じるもの
③現在問題となっているテーマについて論じるもの
①では、「ナショナリズム」などキーワードやテーマが設定されたり、仮想の調査地が与えられたりと、ある程度限定された枠組みの中で論じる必要がある。しかし、いずれにしても自分なりの問題関心に基づいて論じることがポイントとなっており、方法論的な正確さよりも独自の問題設定、ユニークな調査計画が求められている。自分が興味を持つ社会問題や生活の中で気になることは何か、またそれらをどのように社会学的に調査するかを数パターン考えておけば、どれかに寄せて書くことができるだろう。また、最低限の調査方法についての理解も見られている。主要な量的・質的調査を勉強しておこう。
③についても同様に、現代的なテーマへの関心と理解が評価されている。たとえば、近年ではヘイトスピーチや女性の労働などについて社会学的な観点から言及するものも多い。なぜそのような問題が生じるのか、どういった解決策があるのかについて主要な論点を踏まえたうえで自分の考えを練っておくことが大切である。
②については、一般的な社会学の教科書に載っている理論を押さえておけば書ける問題がほとんどである。何人かの社会学者の名前を引きながらこれまで言われてきたことを整理し、そのうえで自分の見解を論じることが必要となる。比較的新しい教科書を2冊か3冊程度通読しておけば対策としては十分だろう。
いずれにしても、評価されているのは知識、社会学的なものの見方、独自性の3つだと考えてよい。後ろの2つは、常識を問い直す態度を身につけているかと言い換えられる。優れた社会学的な研究は、我々が普段当たり前だと思っているものが実はそうではないということを示してくれる。理論を勉強しながらそのような考え方に慣れていくことで、合格に近づけるだろう。
伊藤先生